2,007PV QRコード

この記事のQRコードが表示されます。
スマホアプリのQRコードリーダーを利用してこのページにアクセスできます。

「2.肩峰下インピンジメント(腱板損傷)」
QRコード
2.肩峰下インピンジメント(腱板損傷)

肩痛の原因となる「腱板損傷」について解説していきます。

1.腱板損傷の概要

高齢者の約40%に腱板断裂が認められ、その内の20%は棘上筋腱の完全断裂とされています。

しかしながら、腱板断裂があるからといって必ずしも肩に痛みがあるとは限らず、無症状のケースも非常に多いので画像診断のみで痛みの原因を判断しないことが大切です。

腱板断裂患者の受診理由で最も多いのは「夜間痛」であり、運動時痛ではないこともひとつのポイントになります。

そのため、痛みを最小限にできる就寝姿勢を指導することが初回は重要です。

腱板断裂は大きく分けると、①部分断裂、②完全断裂、③広範囲断裂に分類できますが、広範囲断裂の場合に限って肩関節挙上困難となります。

完全断裂では挙上が保たれているケースがほとんどなので、MRI画像で断裂は軽度なのに肩が挙がらないヒトでは、腱板断裂以外の要因を考えることが必要です。

2.腱板断裂と肩峰下インピンジメント

腱板断裂の原因で最も多いのが「肩峰下インピンジメント」であり、肩峰下にて腱板(主に棘上筋腱)が挟み込まれることで損傷します。

ほとんどは慢性的な機械的ストレスが原因で起こるため、痛みを起こした明確な受傷機転がなく、腱板も擦り切れてるような状態となっています。

肩峰下インピンジメントが起こる原因を大きく分けると、①上腕骨外旋の不足、②前・下方関節包の短縮、③三角筋の優位があります。

通常、肩関節は挙上するときに上腕骨が外旋していきますが、外旋することで大結節が肩峰下と接触することを避けています。

しかしながら、筋肉(収縮性組織)や周囲組織(非収縮性組織)がタイトになっていると、上腕骨の外旋を阻害して肩峰下インピンジメントを引き起こす可能性があります。

下方関節包が縮小しているケースにおいても肩挙上時に上腕骨頭が上方に押し上げられ、肩峰下インピンジメントが生じます。

非収縮性組織(関節包)の硬さは徒手的に骨頭を動かす(モビライゼーションを加える)ことで確かめることができます。

肩関節の動きは複数の筋肉が収縮することによって作り出されていますが、それぞれの筋線維の方向によってベクトルは異なります。

三角筋は骨頭を上方に変位させるベクトルを持っており、反対に腱板(棘上筋を除く)は骨頭を下方に変位させるベクトルを持っています。

もしも三角筋が優位(腱板が機能不全)となっているケースでは、骨頭を上方に変位させるベクトルが強くなることから、肩峰下インピンジメントを引き起こす原因となります。

3.腱板断裂の画像診断

肩峰骨頭間距離(AHI)が狭小化(6㎜以下)していると腱板断裂が疑われるとされていますが、実際はほとんどの患者で狭小化を認めることはありません。

理由としては、狭小化する可能性があるのは重症例(広範囲断裂)のみであり、棘上筋腱の完全断裂だけでは狭小化が起きないからです。

前述したように上腕骨頭を下方に引き寄せるベクトルを持つのは棘下筋や肩甲下筋、小円筋だけであり、それらが大きく断裂している必要があります。

腱板断裂を確定診断するためにはMRIが有用であり、上記はT2強調画像ですが、棘上筋腱の部分が白くなっていることがわかります。

炎症がある(水が溜まっている)時点で断裂が疑われますので、そのようなケースではなにがストレスとなって損傷したのかを見つけることが大切です。

    4.腱板断裂の治療法

    腱板断裂を起こす最大の原因は肩峰下インピンジメントであるため、なにが原因でインピンジメントが生じているかを調べることが大切です。

    また、臨床的には胸椎後弯が増強している不良姿勢(カイホロードシスやスウェイバック)に発生しやすいため、胸椎伸展を引き出すエクササイズも有用となります。

    仕事をしているヒトでは、重い物を持つ作業や肩を挙上位でする作業(背が低いの人の調理など)は負担となるため、可能な限り環境調整していってください。


    特集 » 整形外来リハにおける肩痛の原因特定と治療法

    特集シリーズの一覧