膝痛の原因としても多い「大腿脛骨関節症(滑膜)」について解説していきます。
1.大腿脛骨関節症の概要
膝関節は「大腿脛骨関節」と「膝蓋大腿関節」の複合関節ですが、一般的に変形性膝関節症は大腿脛骨関節の変形を意味しています。
ここでは疼痛の原因が大腿脛骨関節に由来している場合を解説していきますが、厳密には関節軟骨がすり減っても痛みは起きないので、変形そのものはあまり関係ありません。
多くの場合は滑膜や半月板が疼痛に関与しており、立ち上がり動作だけでなく、歩行時にも痛みを訴えることが特徴です。
2.滑膜の痛み
大腿脛骨関節症で最も痛みを拾っているのは「滑膜」ですが、膝関節に炎症(水が溜まっている状態)が起きていることが根本にあります。
炎症性疼痛なのでステロイド注射が著効しやすく、初回の診察で注射後に痛みが大きく改善しているケースも非常に多いです。
炎症を早期に沈静化させるためには「患部の安静」が第一ですが、仕事などで安静がとれない場合は、痛みが長期化してしまうリスクがあります。
3.膝関節の動揺を防ぐ
大腿脛骨関節の負担を増強させる原因として、①膝関節のスラスト(内外反の動揺)、②膝関節の回旋障害(多くは下腿外旋)が挙げられます。
歩行時のスラスト現象は膝に伸展制限があり、ロッキングできないことも要因となるため、膝が伸びるようにアプローチすることで立脚期の内外反への動揺を防ぎます。
足部のマルアライメントも膝関節の内外反に影響を与えますが、修正にはインソールが有効であり、膝関節の動揺には側方支柱付きサポーターが有効となる場合もあります。
変形性膝関節症(内反変形)は「後足部内反+レッグヒール角外反」のヒトに多く、扁平足で膝が捻れている(下腿外旋)と発生リスクが高いです。
4.大腿脛骨関節症の治療法
基本的に膝関節の変形は周囲の関節(股関節や足関節)が問題で起こるため、必要に応じて膝周囲の関節にもアプローチしていくことが大切です。
ここで述べたこと以外にも多くの要素が関与しており、一概にこれだけをしたらいいという万能な方法が存在しないところが難しいともいえます。
ひとつだけ言えることは、中高年で膝関節炎を起こすヒトのほとんどは明確な受傷機転がなく、時間の経過とともに改善していくケースがほとんどです。
しかし、受傷機転がないというのはその原因を取り除かない限りは「再発リスクが非常に高い状態」なので、その時点からどこかを必ず変える必要があります。
仕事で歩き回ることが原因なら歩行量や荷重量を調節したり、筋力トレーニングをして膝の動揺を軽減させたり、なにかひとつでもいいので変化させることが大切です。
注射をして痛みがなくなったから終わりではなく、将来のことまで考えたアプローチを心がけてみてください。