腰痛の原因としても多い「腰椎椎間板症」について解説していきます。
この記事の目次
1.腰椎椎間板症の概要
リハビリの病名で「椎間板症」と書かれていることは多いですが、患者の訴える腰痛が本当に椎間板性なのかはセラピストも鑑別する必要があります。
臨床的には、以下の項目に該当する場合は、椎間板性腰痛の可能性が高いです。
- MRIで椎間板変性が存在する
- 椎間板変性が存在するレベルに一致した腰痛がある
- 腰痛は腰部中央に出現する
- 椎間板内圧が上昇する姿勢(座位や腰椎屈曲姿勢)を継続することで痛みが出現する
これらの項目に当てはまる場合は、椎間板の関与が強く疑われます。
2.椎間板の支配神経
椎間板性腰痛の特徴に「腰部中央に腰痛が出現すること」が挙げられますが、その理由として、脊髄神経前枝から分岐する脊椎洞神経の支配があります。
その他の腰痛原因である椎間関節障害、仙腸関節障害、筋・筋膜性腰痛などは脊髄神経後枝からの支配を受けるため、腰部片側に痛みを訴えることが特徴です。
このあたりは鑑別方法として非常にわかりやすいので、ぜひともチェックしてみてください。
3.椎間板内圧との関係
椎間板が潰れる(変性する)原因は、椎間板内圧が高まった姿勢をとるためです。
上の画像は椎間板内圧と姿勢を示したものですが、立位よりも座位が、後屈姿勢よりも前屈姿勢のほうが椎間板への負担が高くなることがわかります。
椎間板性腰痛は前屈で痛みが誘発されるとされていますが、単純に前屈させてみて痛みが起こるケースは少なく、動きをみるだけでは鑑別が難しいように感じます。
そのため、普段どのような姿勢で痛みが起こるかを尋ねるようにし、その姿勢が椎間板内圧を高めることに繋がっているかを考える必要があります。
臨床的に多いパターンとしては、長く座っていると腰が痛くなるとの訴えで、その場合は座り方や腰部クッションなどの使用も検討していくと効果的です。
4.椎間板への負担を考える
座位や前屈姿勢で椎間板内圧が高まると書きましたが、実際の姿勢についてもチェックすることが大切です。
椎間板症を起こしやすいヒトというのは、腰椎から屈曲しやすい傾向があるので、姿勢や身体の動かし方についての指導が必要となります。
私が臨床でよく実施する方法としては、座位で膝関節の伸展運動、股関節の屈曲運動を実施してもらい、その時に腰椎の屈曲が入るかを確認します。
屈曲しやすい場合は、患者に腰椎の棘突起を触ってもらい、腰が飛び出ないように注意しながら普段から姿勢を保つようにしてくださいと説明しています。
5.朝より夕方のほうが痛みが出やすい
椎間板性腰痛は朝よりも夕方のほうが出やすい傾向にあり、その理由として、椎間板の水分が徐々に抜けていくことが挙げられます。
椎間板は水を含んだスポンジのようなものとイメージしていただくとわかりやすいですが、圧が加わることで中の水分は抜けていきます。
そのため、水を多く含んだ朝のほうが負担は少なく、水が抜けた夕方(不良姿勢を続けたあと)のほうが腰痛を引き起こしやすいと考えられます。
6.椎間板症を起こしやすい姿勢
椎間板症を起こしやすい不良姿勢(腰椎から屈曲しやすい姿勢)には特徴があり、下部体幹が後方に位置しているケースに起こります。
ケンダルの姿勢分類では、フラットバックやロードシスが該当し、とくにフラットバックは椎間板症や椎間板ヘルニアを最も起こしやすい不良姿勢となります。
7.腰椎椎間板症のリハビリ治療
椎間板症の治療を行ううえで知っておかなければならないことは、「1度潰れてしまった椎間板は元に戻らない」ということです。
根本的な原因を解決することはできないため、可能なら姿勢や動きから椎間板変性のリスクを予測し、発生を予防することが重要となってきます。
しかしながら、外来リハビリで担当することになるのはすでに変性してしまった椎間板症なので、そこからできる限りに腰痛を出さないようにすることが求められます。
そのためには、腰椎伸展の可動性を確保する、椎間板内圧を高める姿勢をなるべくとらないことなどが挙げられます。
後方支柱付きのコルセットを着用するなどして、強制的に腰椎の屈曲が出ないように調整することも有効となります。
椎間板症の根本的な腰痛改善は困難ですが、負担をかけないようにすることである程度に疼痛コントロールは可能です。
そのことを理解したうえで、そのヒトに必要な生活指導や在宅エクササイズを指導していくようにしてください。