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「4.仙腸関節障害」
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4.仙腸関節障害

腰痛の原因としても多い「仙腸関節障害」について解説していきます。

1.仙腸関節障害の概要

リハビリの病名で「仙腸関節障害」と書かれていることはほとんどないですが、患者の訴える腰殿部痛が仙腸関節であるケースは意外と多いです。

病名にならない理由としては、単純X線撮影やMRI撮影でも異常が見つからないため、異常所見として診断することができないことが挙げられます。

臨床的には、以下の項目に該当する場合は、仙腸関節障害の可能性が高いです。

  1. 腰殿部痛が片側に出現する
  2. 仙腸関節が圧縮または離開される動きで痛みが出現する
  3. 仙腸関節を徒手的に圧迫することで痛みが再現できる

これらの項目に当てはまる場合は、仙腸関節の関与が強く疑われます。

2.仙腸関節障害の放散痛領域

仙腸関節障害では、基本的に殿部片側に痛みを訴えることになりますが、大腿外側や大腿内側、鼡径部、ふくらはぎにも痛みが生じる場合があります。

痛みは分節的に起きることが特徴で、例えば、ふくらはぎに放散痛があったとしても、殿部から下腿部にまで痛みが波及するのではなく、それぞれに痛みが発する形となります。

3.仙腸関節の動きについて

仙腸関節障害を考えるうえで、まずは仙腸関節がどのように動くかを知っておく必要があります。

仙腸関節の関節面は不規則な形状をしており、それらがはまり込んでいるために可動性は非常に乏しいことが特徴です。

動きは大きく分けると2方向で、ニューテーションとカウンターニューテーションであり、前者は締まりの位置に、後者は緩みの位置になります。

上の画像は、仙腸関節の動きに関与する筋肉をまとめた表です。

もしもカウンターニューテーションしていることが問題なら、仙腸関節をカウンターニューテーションさせる筋肉をほぐしていくことが必要となります。

仙腸関節障害はどちらの方向に偏っているかをみていくことが大切で、治療する方向を間違わないように注意してください。

4.寛骨の傾きと脚長差について

仙腸関節のズレを確認する方法として、最も簡単なのは、仰向けの状態から左右の脚長差をチェックすることです。

脚長差がある場合は、上前腸骨棘の高さが違う可能性が高いので、上前腸骨棘の下方に指を当てるようにして左右差を比較します。

脚が長い方(上前腸骨棘が低い位置にある方)は仙腸関節がカウンターニューテーションしていることが推察され、不安定性を伴っていることが疑われます。

臨床的にはニューテーション障害よりもカウンターニューテーション障害のほうが多く、脚が長い方が問題を起こしやすい傾向にあります。

5.仙腸関節障害と変形性股関節症

仙腸関節障害と変形性股関節症は非常に密接な関係にあり、どちらかに問題が存在すると、相手にまで問題を波及することになります。

変形性股関節症は先天的に臼蓋形成不全があるケースが多く、骨頭を中心に保つために寛骨前傾や股関節屈曲位に保持しやすいです。

その状態になるとカウンターニューテーションを助長することにつながり、歩行時(片脚立位時)に骨盤の動揺を引き起こす原因にもなります。

6.仙腸関節障害を起こしやすい姿勢

仙腸関節障害を起こしやすい不良姿勢には特徴があり、カウンターニューテーション型では、骨盤が後傾位にあるフラットバックで好発します。

ニューテーション型では、骨盤が前傾位にあるカイホロードシスなどのほうが発生しやすく、仙腸関節障害のタイプによって起こしやすい姿勢は異なります。

痛みを誘発しやすい場面としては、カウンターニューテーション型は歩行時や座位など、ニューテーション型は寝返り時などに生じます。

7.仙腸関節障害のリハビリ治療

仙腸関節障害のタイプまで分類することができたら、その方向とは逆に調整していけるような治療プログラムを組むことが必要となります。

カウンターニューテーション型の場合は、ニューテーション方向に誘導するために、寛骨前傾筋のリラクゼーション、寛骨後傾筋および仙骨前傾筋の筋力強化を図ります。

股関節伸展の可動域を拡大することで代償的な寛骨前傾を防ぐことも有効と考えられますが、無理にストレッチをすると寛骨前傾を強めることになりかねません。

そのため、程よく筋肉が伸びる程度の運動にとどめ、普段から股関節が硬くならないように伸ばしていくことが重要となります。


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