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「8.「手技を評価する過程」で起こる問題の対応策について」
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8.「手技を評価する過程」で起こる問題の対応策について

本特集シリーズでは、これまでの記事の中で、手技を評価する事、手技の強度や、種類(直接法・間接法)について、手技をとりあえず用いる事の妥当性について、手技を学ぶ際の講習会選びのポイントなどを解説してきました。

今回の記事は、「1.用いた治療手技そのものを評価するということ」を捕捉する内容となっています。

最初の記事では、手技の選択基準が複雑になった場合の対処法がある事を書きましたが、その内容についての説明はおこなっていないため、この点について解説していきたいと思います。

 

まずは、「手技を評価する事」のおさらい

(手技を評価する事について、簡単に振り返ります。)

 

まずは、似たような症状を訴える患者の全員に対して、最初は同じ手技を用いて治療にあたります。

その中から、効果がより出る患者が現れたとします。

さらに、この取り組みを続けているうちに、ある特定の特徴を有している患者により効果的だという法則性が見つけられるかもしれません。

 

その法則性が見つかってしまえば、これからは、その手技を選択するまでのプロセスを大幅に短縮する事できます。

つまり、特定の症状から特定の手技を選択するという事が可能となります。

 

手技を評価するというのは、この法則性を探す行為に当たります。

 

目的:特定の症状から手技を選べるようになる

この「手技を評価する」という行為は、特定の症状から、特定の手技を選択する事ができるようなる事を目的に手技の評価をすすめていくものです。

しかし、いつでも想定通りに上手くいくものではありません。

 

「特定の条件が陽性なら、、、」という条件を設定しているのに、そうではない患者にも効果が出てしまった時です。

具体的には、「腰を曲げた時に痛い」と言った患者で効果があったはずなのに、「腰を反らした時に痛い」という患者にも効果が出てしまった場合などが該当します。

この場合の一つの対応策としては、症状と検査の組み合わせで、その手技を選択するという事が可能かをみていく事になります。

 

症状と「検査」の組み合わせで手技を評価する

ここで用いる検査は、基本的には自動運動が良いです。

他動運動でも可能ですが、セラピストが介入するという別の因子が加わってしまうので、可能であれば、患者の自動運動で完結するものの方が良いと思います。

自動運動で評価する事ができれば、セラピストの労力はほとんどなく、簡単な口頭指示だけで目的が達成されるので利便性にも優れます。

では、もう少し深掘りして説明していきます。

 

自動運動で共通する特徴を探す

例えば、腰が痛いといった患者の「腰を反らすと痛い」といった患者と「腰を曲げた時に痛い」という患者の2人がいた場合です。

痛みの誘発動作が違う2人に、同じように陽性となる自動運動に関する共通項がないかをみていきます。

ベッド上背臥位を想定してみると、そこから

  • 下半身から寝返ろうとする動きで、下半身だけをローリングする動作
  • 上半身から寝返ろうとする動きで、上半身だけローリングする動作
  • 自身で体を丸め込むように両膝を抱える動作
  • その逆に腰を反らせるように殿部をベッドから挙上する動作

などが分かりやすいかもしれません。

また、

  • 膝を立てた背臥位(背臥位両膝立て位)で両膝を一方に倒すように捻れるような運動
  • 片脚だけを外に倒す運動(片側股関節の開排位)
  • 足部の位置をやや開いた状態で片側下肢をニーインするような動き

などです。

 

他にもたくさんあると思いますが、患者が理解しやすく、セラピストも説明しやすい運動で、誰でも簡単にできるものを考えてみて、それらを5分以内で一連の流れとしてチェックできるように自身の中で整理します。

セラピストによって準備された「ベッド上での自動運動」は、これから先、それを考えた人自身が、ルーティンで患者に確認する自動運動です。

 

自動運動の特徴を条件に加える

ここで、話を戻します。

先ほど例で出した「腰を曲げた時に痛む患者に効果が出るはずであった手技」が、実際に腰を曲げた時に痛いと訴えた患者に効果を示してしまった場合の対応です。

まず確認したい事としては、この、本来想定していなかった改善を示してしまった患者を被験者に、ベッド上のルーティンの自動運動を行ってみて、何か陽性となるものがあるかです。

 

今回のケースは、後から確認する流れとなっていますが、

次からは、その手技を用いようとした患者の全てに、治療を行う前に、事前にルーティンの自動運動を確認した上で、その後、実際に効果があった人の検査結果がどうであったかを確認するという手順に行います。

「腰を曲げると痛い」

「手技Aを選択」

ではなく、その前に、ルーティンの自動運動検査を入れます。

「腰を曲げると痛い」

「ルーティンの自動運動検査」

「手技Aを選択」

なぜなら、後から確認しようとしても、完全に良くなってしまった場合は、自動運動検査の結果が変わってしまう可能性があるからです。

 

次の治療の初めに確認するのも一つの手ですが、それだと治療効果が残存していれば、そういった患者たちの特徴を抽出できなくなってしまいます。

なお、ルーティンの自動運動は、疼痛誘発のパターンを知りたいだけなので、その結果によって、今から用いようとしている手技を変更するという事はしてはいけません。

 

治療手技選択のための自動運動検査

これらの事を繰り返してデータを蓄積していると、何かと何かが組み合わさった時に効果を出す事ができるという事が言えるようになります。

例えば、

  1. 腰を曲げた時の痛みは、手技Aを選択する。
  2. しかし、腰を反らした時に痛い場合でも、自動運動検査の○○で痛みが出た場合は手技Aを考慮する。

このようにすれば、「腰を反らした時に痛い患者で効果があるはずなのに、腰を曲げた時に痛い患者でも効果が出てしまった」という、セラピスト側に起きるであろう混乱を防ぐ事ができます。

  1. 腰を反らした時の痛みは、手技Bを選択する。
  2. しかし、手技Bが効かない場合は、自動運動検査(ルーティンで用いた何か)を確認し、その結果次第で手技Aの選択も考慮する。

これらの行為を繰り返してデータを蓄積すると、「治療手技選択のための検査」ができあがります。

これを準備できれば、明らかにその手技を選択すべき人には今まで通り「症状から手技の選択」ができ、適応に迷った時に追加の検査として「治療手技選択のための検査」を用いて、その手技の適応があるかを評価する事が可能になります。

「腰を反らす」と「曲げる」では、運動方向としては全く逆の運動なのに、同様の手技で治療できてしまった時に、ルーティンでの検査を加えて行っておくというアプローチによってデータを蓄積できていなければ、なんで効果があったのだろうかと、セラピストを悩ませる結果になってしまいます。

しかし、いくつかの「治療手技選択のための検査」が準備できていれば、例え、矛盾するような結果が出ても、「他の条件の組み合わせでも適応を見極めれる」という事ができ、セラピストを悩ませる事は激減します。

「1+1=2」というように、きれいな答えが出せないのが臨床だと思います。

その複雑な部分を、可能な限り整理する技術を身につける事ができれば、自身の臨床を助けてくれると思います。

 

まとめ

ここで解説していることは、実際に私自身が、臨床で見つけた法則と矛盾する結果が出てしまった時の対応策を考えてみた時のアプローチでした。

推論様式を考えると、パターンリーズニングと多分岐型推論法を併用しているイメージです。

記事の中で例として示したように、症状からのパターンリーズニングによる手技の選択と、「治療手技選択のための検査」による手技の選択というのを併用して、個人的には上手く整理できている事は多いなと実感しています。

一見、矛盾する結果も、いくつかの検証過程を通して、異なるタイプの患者と思われる場合でも共通項が見つかる場合は意外に多いと思います。

最初は、多くの事に悩んでしまいますが、一つずつ経験を蓄積する以外に道はないと思っています。

データを蓄積していく行為は、正直複雑で、面倒な部分もありますが、これを地道に蓄積していけば臨床とは矛盾しない法則を見つけられると信じています。

手技を評価し、その手技の選択法を見つける過程で、矛盾した結果に出会った時の対処法を書かせて頂きました。




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